2021.3.11 thu. - 3.16 tue.

myheirloom pre-open exhibition vol.1

菊岡穂 鈴木隆史 二人展

​「今 炎を上げる」

□展示会期:3.11(木)〜3.16(火)

・会期初日11日:14時〜20時 ※初日は両作家在廊予定です

・会期中:平日(12,15日)13時〜20時 

・会期中:土日(13,14日)12時〜20時

・会期最終日16日:13時〜18時

※最終日は終了時間が短いのでご注意ください

myheirloomではこの度、菊岡穂と鈴木貴文による二人展

「今 炎をあげる」を開催いたします。

myheirloom(マイエアルーム)は、現在特定の場所を持たないノマドプロジェクトとして展覧会の企画を行っており、今回が第一回目の取組となります。  会場は江戸川橋のGallery NIWにご協力頂き、二人展の特性を活かしつつ、最適な環境下で作品を鑑賞頂けるよう配慮しております。

​生活様式の変化を迎えてから約1年。今こそ作品の持つ力に正面から向き合うことで、日常の中で光る芸術の新たな可能性を見出せるものと考えています。​

このようなご時世ではございますが、ご高覧頂けますよう、よろしくお願い申し上げます。

 菊岡穂は、線という概念を制作の中に取り入れ、要素を抽出することを試みている。線は何かと何かを区別し整理するものであり、分断するものであると同時に、点と点を繋ぐものであり、形を構成するものである。つまり「線」とは、最終的に様々な事象に対してなんらかの因果関係をもたらす要素となり、それらは時の流れと共に物語を紡いでいくものと同義であるといえる。

 例えば国境は、分断の象徴であり戦争や差別を引き起こすものであり、秩序やルールであり、国の歴史、物語そのものでもある。カレンダーや時計が、時間の流れという目に見えない存在を区切ること。 四季が存在し、人々がその流れの中で生活を営むこと。性別や年齢、 生まれた場所によって変化し、形作られる事象。 それらは全て「線を引くこと」である。

 ゆらゆらと張り巡らされた糸が世界中を紡いでいるような、そしてそれが切断されたりピンと張り詰めたり撓んだりしながら構成されている空間・事象が、我々の生きる日常の中で確かに息づいている。 

  菊岡は、線を引くという行為そのものの二面性や、その結果がもたらす様々な事象を、線の遊び場とも言えるような絵画の中で表現しようと試みている。それらが紡ぐ物語はよもやキャンバスの枠を超え、一つ一つの点が線となって結びついてゆく。作品を前にした時、 我々はそんな壮大な世界を連想せざるを得ない。

IMG_3540.JPG

  鈴木隆史は、彫刻刀を使いニュートラルカラーの黒い画面に自らの祈りを込めてモチーフを掘ることで、描くという行為の手紙化を試みている。言葉を紡ぐように支持体を彫り進める鈴木の制作は、さながら世の中の憂いを詠う詩人の様である。

 2018年のシェル美術賞にて受賞となった作品「音速のラブレター」は、長年連れ添ったパートナーとの別れを経験した自身の思いを消化するべく、音速というワードを使い、感情を乗せた彫りの絶妙な力加減をもって制作された作品だ。 軽やかに素早く、ときには人を傷つけてしまう刃のような刺々しさと、相手を想い、振り返りながらも颯爽と送り出そうとする感情が重なって見える。

 彫刻刀による線は、力の入れ方によって多彩な表情を持ち、支持体に生を吹き込む。掘るという動作そのものが儀式的であり「小さな心の声を拾い上げる」という自身の制作信念を体現しているといえるだろう。

 更に特徴的な要素が、作品の表面を炎で炙ることで複層的かつ重厚感のあるマチエールが生まれている点である。作者本人にも最終的な仕上がりの想像がつかないほどの変容を見せるこの技法は、作品世界をより強固なものとし、そこから発せられるメッセージをダイレクトに感じるためのスパイスとなる。

 鈴木にとって絵画を描くこととは、日々の営みの中で見逃してしまいそうな小さな灯火を見逃さないための祈りであり、心のライフラインなのだ。   

  東日本大震災からちょうど10年が経った今、世の中は再びパンデミックの中で先の見えない物語を綴り始めているが、そのことにより分断されるもの、逆に繋がりや絆が見えるものもあるだろう。

 本展は、人を取り巻く様々な苦難や、それを乗り越えてきた歴史、人との繋がりを、灯った小さな火がだんだんと大きくなっていく様子になぞらえ、この時代の1ページにささやかな栞を挟むように構想したものである。

 火は、小さな点が広がり、大きくなっていく。 生命の起源であり、信仰の対象であり、ライフラインであり、団結の目印となり、とき力の象徴として人々の驚異になり得る存在である。
 両作家の絵画世界は、今を生きる我々の心に小さな明かりを灯し、新たに始まる物語の道標となるに違いない。ささやかで控えめな、でもどこか力強く芯のある、そんな作品が織りなす絵画世界を感じてもらえれば幸いである。

菊岡穂

1992年生まれ 東京都在住

2016年 大阪芸術大学 デザイン学科VAコース 中退

2016年 トーキョーワンダーウォール 入選

2018年 SHIBUYA AWARDS 2018 入選

2019年 FACE展2019 入選

2020年 東京藝術大学 美術学部絵画科 油画専攻 卒業

2021年 FACE展2021 入選

鈴木隆史

1980年生まれ 栃木県在住

2013年 東北芸術工科大学 洋画コース 卒業

2014年 第1回CAF賞 入選

2015年 東北芸術工科大学大学院 芸術工学研究科 修士課程芸術文化専攻 芸術総合領域 修了

2018年 第13回大黒屋現代アート公募展 入選

2018年 シェル美術賞展 大坂秩加審査員賞 受賞