current / upcoming

unnamed (2).jpg

myheirloom(マイエアルーム)ではこの度、山ノ内陽介による個展「深淵まで」を開催いたします。

myheirloomは、現在特定の場所を持たないノマドプロジェクトとして展覧会の企画を行っており、今回が第二回目の取組となります。

会場は渋谷のRoom_412にご協力頂き、最適な環境下で作品を鑑賞頂けるよう配慮しております。

このようなご時世ではございますが、ぜひご高覧頂けますよう、よろしくお願い申し上げます。

山ノ内陽介という作家は変わっている。飄々としており、掴みどころがない。

SNSを始めたと思いきや「修了展期間限定なんで…」とあっさり終了し、黙々と制作に向かう姿勢がやや浮世離れしているようにも見える。

「作品は二の次の、後付けの様なコンセプト。僕はそんなものにあまり関心がなくて。ただひたすら上手くなりたいし、絵画ともっと向き合っていきたい。見てくれた人の心に刺さる、良い絵を描き続けたいだけです。」

なんのために描くのか、内から出る衝動や感情というものの対極に存在する、冷静な絵画への眼差し。

構図、絵の具の使い方、配色、ストローク、技法。

根底にある思いは「何を描くのか」や「なんのために描くのか」では無く、シンプルに「どう描くか」の追求だ。

描くことへの飽くなき探求心から筆を取り続ける姿勢は、意味生粋のクリエイターであると言えよう。

まだ見ぬ完成体を現在進行形で追い求め続け、眼の前の絵画のみに没入出来る鑑賞体験と、一瞬で人を引き込む造形物としての純粋なパワーの創造こそが、作家としてのモチベーションであり制作理由となっている。

本展は山ノ内が東京藝術大学の修士2年となった昨年から、今年3月の修了制作に向け構想してきた「絵画の表層(皮)」シリーズと、現在進行形で

研究中の抽象絵画のシリーズ、さらに、山ノ内作品の根源的な部分であるストロークの美しさを追求してきたポートレートペインティングシリーズの3シリーズで構成される。

「皮」は文字通りオイルの膜を利用した造形的技法で制作されるシリーズであり、本展の展示構成において中心となっている。

絵の具と油の配分を調整し、一度パネルに描いたものを内部が乾く前に表面だけ剥ぎ取ることで異質な存在を放つ「皮」が生まれる。

この異質な「皮」は強烈に空間における視線誘導を引き起こし、鑑賞者と支持体との間の「ズレ」による違和感から、どこか居心地の悪さと、逆に目について離れないような相反する感覚の揺さぶりをもたらしている。

また、修了展で発表した抽象的な図像作品は、ある意味この「皮」を中心とした視覚の揺さぶりを中和し、不安定な場にピリッとした空気をもたらす役割を担っていた。現在進行形で取り組んでいる新しい展開でもある。

そして、ポートレートシリーズは山ノ内の共通した特徴でもある「表情のない」ものとなり、顔の中身は大胆な筆致により塗りつぶされている。

このストロークにはある意味感情を乗せ、無表情の先の見えない心象を炙り出すかのように描かれており、無い表情の奥に吸い込まれるかのような没入感を獲得した、ブラックホールのような絵画となっている。

これらの技法は現在進行形で進化しており、素材として「皮」を剥がされた残骸を活かした作品や、下地を描いた後で上から重ねて二層目を描き、乾ききる前に二層目の一部を削り取ることで一層目の下地を露出させるような複層的な作品など、多様な表現の振り幅に可能性を見出している最中だ。

今後は抽象の表現にも力を入れ、さらなる技法の探求に向かっていく、まさに過渡期となる作品群である。

今回、主に2020年以降の山ノ内の技法への探求成果を公開するとともに、現在進行形で絵画に挑み続ける彼の眼差しを追いかけるための入口となっている。

「深淵」に向かうかの様にストイックかつミニマルな制作への姿勢と、型にはまらない創作への探究心。

絵の具という物質が絵画へと変換される瞬間の、作品が持つその本質的な魅力に触れてもらえれば幸いである。

  • Twitter ブラックアイコン
  • Instagram ブラックアイコン

山ノ内 陽介
1996年生まれ 神奈川県在住
2018年 シェル美術賞 学生特別賞 受賞
2019年 名古屋造形大学 造形学部 造形学科 洋画コース 卒業
2021年 東京藝術大学 大学院美術研究科 油画修士課程 修了
2021年 東京藝術大学 修了展 帝京大学買上