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那須佐和子 個展 「燈台へ」

2022年2月10日(木)〜2月27日(日)

会場:myheirloom​

開廊時間:木・金 15:00〜19:00 

土・日 12:00〜19:00

定休:月・火・水

​※2月10日(金・祝)も通常営業となります。

那須佐和子の展覧会は

biscuit gallery(渋谷区)

銀座 蔦屋書店(中央区)

myheirloom(千代田区)

の東京都内3会場で同時開催されます。

ぜひ他会場含めましてご高覧いただけましたら幸いです。

 myheirloomではこの度、那須佐和子の初個展「燈台へ」を開催致します。那須はこれまで絵画があるべき場所/そのあり方について、多様なアプローチを行いながら探求してきました。フレーミングへの眼差しから、四角く囲われたキャンバスの際を超えたはみ出す表現を行い、絵画の「所在」を曖昧にしたり、そこからさらに展示空間へ拡張した絵画の「終着点」と絵画の「居場所」を探る手つきへと進化を続けています。水平線や地平線は、視覚の限界地点でありながら、その先に無限の広がりを想起させるものでもあります。空間に溶け出し、居場所を見つけて佇む絵画には、一種の高潔さや清々しさと、引き算の美を感じ取ることができます。

 

 本展では、ヴァージニア・ウルフの小説「燈台へ」をモチーフに制作した新作を発表いたします。小説は3部構成となっており、ある一家が燈台に行こうと話している場面から始まります。2部ではそこから10年の月日が流れ、登場人物に訪れたさまざまな変化(死や家の荒廃)が記述され、そして3部では残された人々が再び灯台に出向こうと試みる様子を中心に展開し、クライマックスを迎えます。

  

 登場人物の中に女性の画家がおり、1部で亡くなってしまったある人物を描こうと苦心する姿から着想を得た本展は、「捉えがたいものを描くこと」「流れていく時間がある瞬間に不変のものになること」「その瞬間を描き表すこと」を本展の根幹に据えています。

 那須は「消え去っていく時間と永遠の相剋を芸術に昇華しようとしたウルフの業が作中の画家の中にも投影されている」と言います。画家が第一部以来描くことができなかった絵を完成したところで小説の幕は閉じられますが、ウルフ自身が投影された「画家」が作品を描きあげる過程についての言及は、作家による制作過程の告白であり、その正直さに深い感動を覚えずにはいられません。

 

 ヴァージニア・ウルフは、小説家の仕事について「生は、つり合いよく整えられた、一連の馬車ラムプの光ではない。生は、意識をもったその最初から終局に至るまで、われわれをとり巻いている半透明な暈、燐然と輝く光彩(Luminous Halo)である。この定まらぬ、未知の、捉えがたい精(spirit)を書き表すこと。」と語り、「意識の流れ」に基づく新しい小説手法を生み出した女性作家です。

 そういった思想に共鳴した那須が自身の風景画によく登場する「月光」と称する丸い点を、今回自分自身から放たれる光(レーザーポイント)として描き、小説において不変なるものとして機能している燈台の光と重なり合わせることで、瞬間と永遠が重なり合う束の間の時を追い求めたウルフの思想を体現しようとしています。

 燈台から放たれている光を見た登場人物たちが、そこに様々な思いを巡らせながらまるでその光と一体化し、溶け合っていくような描写は、作品と対峙する我々鑑賞者の姿そのものであると言えるでしょう。また、心を照らす「光」は、人の心を写しとる鏡のようなものでもあり、世界を捉える画家の眼差しとも似ています。絵画から放たれる「光」は確かに目の前に存在し、それを見つめる我々鑑賞者の現在の立ち位置、居場所、その確かさについて問いかけてくるかのようです。

 

 那須の持つ絵画への飽くなき探求心、美しさの希求、そのフェチズムに触れながら、あるべき場所に存在する絵画の佇まいに目を向けていただければ幸いです。

那須 佐和子 

1996年⽣まれ 

 

学歴

2022年 東京藝術大学大学院 美術研究科修士課程 油画第一研究室 在籍中

2021年 東京藝術大学美術学部 絵画科油画専攻 卒業

 

主な個展

2022年 「slipped moonlight」 銀座 蔦屋書店アートウォール・ギャラリー

主なグループ展

2022年 那須佐和子×布田葉太郎2人展「最終観測者、?」biscuit gallery

2021年 多田恋一朗×那須佐和子2人展「b⇔d」biscuit gallery

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