坂本那々莉 個展
“わたしの尊厳は翡翠色”
【開催概要】
会場/myheirloom
東京都中央区日本橋大伝馬町11-10 西井ビル 3階
会期:2025年11月8日(土)〜11月23日(日)
木金/16:00~19:00
土/13:00~19:00
日/13:00~18:00
※月火水祝 休廊
※曜日により営業時間が異なります。ご注意ください。
※11月14日(金)のみ18時までとなります。
また、最終日23日(日)は17時までとなります。

myheirloomではこの度、東京藝術大学大学院 油画技法材料研究室に在籍中の気鋭のアーティスト、坂本那々莉のキャリア初となる個展を開催いたします。坂本は映画の中の登場人物や構図、色彩などからインスピレーションを得て制作を行うペインターです。
「最も現実的で、最も演劇的である瞬間」を思考しながら、今回の作品を描き上げたという坂本は、特別に派手な構図やモチーフを用いるのではなく、映画の中で流れていくイメージや、フィクションの中に潜む日常を描きます。
過ぎ去っていく景色や、自分からは見えない身体の死角、誰にも見せない部屋での孤独、何気ない夕食の支度。嫌なことも素敵なことも、すべてが私たちの人生という映画を構成する大切なワンシーンなのかもしれません。
もし自分の人生を映画にたとえるとするならば、いつエンドロールに入るかは自分では選ぶことができない。
だからこそ葛藤や悩みが生まれ、理想とのギャップに苦しむ日々がある。
しかしそのような日常や忘れ去っていく小さなことの羅列が、より私の存在の輪郭を形作っていく感覚がある、と坂本は言います。
映画の主人公のように立派な希望や夢がなくても、普段の何気ない生活の中に美しさを見出して丁寧に生きることだけは忘れたくない。そのために、現実の自分が「物語の中の理想の女性」を描く。
彼女の制作は、自身の「女性としての強さや理想」を掲げ、自分らしく生きるための行為であり、同時に全ての女性を鼓舞するアイコンになりえるでしょう。
特徴的な凹凸感のあるマチエールはスクリーンに流れる光の粒子であり、油彩特有の光沢感をさらに引き立てます。
画面のざらつきが境界(画面)として現実世界にいる私たちとを分かつことで、一層その奥の場面に引き込まれるような効果を生んでいるのかもしれません。
ぜひ展示会場で、作品の質感から映像的な光の色彩表現まで、画像だけでは分からない細部までを直接ご覧いただければ幸いです。
誰もが「もっと社会や人生や私がこうだったら」と思う瞬間があると思います。
特に女性は、社会的な抑圧を日常的に受けているからこそ、
フィクションの中に登場する自由奔放で強い女性像に憧れを抱くことが多いのではないでしょうか。
私自身も、映画や舞台に登場する力強い女性たちに幾度となく救われてきました。
生きづらさや怒りを抱えながら、それでも目を閉じれば、カラフルなセットの中を堂々と歩く強い「私」を想像することで、
つまらない日常を何とか乗り越えてきました。
私は、その想像を妄想のまま終わらせるのではなく、物質として絵画に昇華させたいと考えています。
あのフィルムの粒子一粒さえ、私の手の中で砂となり、絵の具となってキャンバスに定着する。
ただの空想ではなく、それは私にとっての「肯定」です。
現実の私が、そして同時代を生きる女性たちが、今日より少しでも強く生きていくための装置として、私は絵を描いています。
坂本那々莉