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myheirloom(マイエアルーム)ではこの度、

浅野克海 新井浩太 松浦美桜香による3人展、

「Pedestrian Paradise 」を開催いたします。

myheirloomは、現在特定の場所を持たないノマドプロジェクトとして展覧会の企画を行っており、今回が第三回目の取組となります。

会場は原宿のTHE black GALLERY にご協力頂き、最適な環境下で作品を鑑賞頂けるよう配慮しております。

このようなご時世ではございますが、ぜひご高覧頂けますよう、よろしくお願い申し上げます。

myheirloom pre-open exhibition vol.3                             

Pedestrian Paradise


 

Pedestrian Paradiseの住人たち
 

 かつて原宿の地で生まれた「竹の子族」や「KAWAII」文化。この地は元来は第二次世界大戦終結直後にアメリカ軍関連施設が多数建設され、異文化を発信する街として若者とともに発展してきた歴史を持つ。

 代々木公園には象徴的なアメリカ軍人向け宿舎「ワシントンハウス」が建てられ、アメリカ人が多く生活することから、原宿には彼らをターゲットにした店舗が続々と開店。玩具店「キディランド」、雑貨店「オリエンタルバザー」、日本初のスーパーマーケット「紀ノ国屋」など、海外の文化が流入し、定着していった。

 1960年代にはオリンピックの影響で日本全国に米式文化が浸透し、海外のファッションや空気を求めて若者が原宿に。この間多くのファッション雑誌が原宿を特集し「最先端」のイメージを確固としたものにしていく。

 1978年にはラフォーレ原宿がオープン。原宿のマンションを自室兼オフィスとする個人デザイナーのファッションブランド(DCブランド)を積極的に販売した。黒を効果的に用いたブランドを身に纏う若者は「カラス族」と呼ばれ、これまでのファッションの概念を塗り替えていった。「COMME des GARCONS」「Yohji Yamamoto」などはこの時代に誕生した。

 竹下通りでは「竹の子族」と呼ばれる集団が活動の幅を広げていた。一日中、歩行者天国でラジカセを担ぎ踊り続けていた若者たちは、ブティック竹の子というお店のゴージャスな雰囲気の服を身に着けていたという。その特徴的な服装は、独特なシルエットと派手な色使いも相まって、中高生を中心に話題を席巻した。竹下通り周辺に中学・高校生をターゲットとしたお店が増えていくきっかけとなった歴史の一つである。

 そして現代に至っては、きゃりーぱみゅぱみゅをはじめとした「HARAJUKU KAWAII」という日本発のカルチャーを世界へ発信するインバウンド拠点にまで成長。アメリカ文化の居留地から、ジャパンカルチャーの代名詞と言われるまでになったのである。

 

 若者が集まるため海外ショップが日本初上陸し、その話題に若者が集まり流行が生まれ、流行にのった国内外の企業がさらに若者を呼び寄せる。この約70年続いた若者発信拠点のサイクルが、このコロナ禍と隣国文化の隆盛により、現在岐路に立たされている。

 2015年あたりから、原宿はインバウンド需要への転換、時を同じくして第3次4次韓流ブームによる爆発的なK-cultureの普及、そして新型コロナウイルスの流行を引き金として、その文化発信拠点としての輝きを失いつつある。

 

 本展では、そんな原宿という街に集い、流行がサイクルする度に霧散していく若者の群像、ブームを消費しながら形成される若者たちの姿とその移ろいを一つの概念的なモチーフとして見立て、ポートレートや人物像を主に制作する3名の若手作家をフィーチャーし構成した。

 3名の作家は「若者」という観点を意識し、参加作家全員が現役学生による企画展という体裁となっている。

 

 移ろいゆく時代の中で、若者を中心とした文化が街とともに混ざり合い、大きくなっていったその熱量について思いを馳せると、かつて歩行者天国(ホコ天)に集っていたであろう、個性あふれる竹の子族やローラー族といった言葉が想起される。

 また、「KAWAII」というワードが世界に通じる言葉となった2000〜2010年代の原宿のカオスもまた、そこから生まれる若者の個性やストーリーが煌びやかに賞賛され、人々を引きつけて止まない時代だったように思う。

 

 

あの交差点で みんながもしスキップをして

もしあの街の真ん中で 手をつないで空を見上げたら

もしもあの街のどこかで チャンスがつかみたいのなら

まだ泣くのには早いよね ただ前に進むしかないわいやいや

                          

                        きゃりーぱみゅぱみゅ 「PONPONPON」

                                          歌詞より

 

 

 カルチャー、トレンド、時代の移ろい、若者の歩み、様々な時代の変換地点にあって、この原宿という地で今行うべき新進気鋭の若手アーティストが表現する人々の姿、群像、交差し生まれる力。

 その、まるで失われた【Pedestrian Paradise】の住人であるかのような、若きエネルギーに満ちた作品群をぜひご高覧いただきたい。

浅野 克海

 人間とは何をもって人間であるのか。浅野は、人間のアイデンティティとは何かを探り、作品にしようと思った時、人間を直接描くのではなく、今後人間という存在の核を揺るがす可能性を持つAIロボットを通して描くのが何よりも深く、人間存在の核に迫れるのではないかと考え、「エネルギーの技法」という独自の絵画理念を生み出した。

 「エネルギーの技法」は、この世界を表した技法であり、絵の具を大量に消費し、ひたすらに線を重ねてゆくという一見無駄が多く、非合理的で、修行のような側面を持つという。この性質こそが、合理的判断をし、一瞬でスキルを習得できるAIロボットには無い性質であり、人間存在の核の1つになり得るはずだという仮説となっている。浅野は、絵画技法を人を表す記号として位置付けることで、何が人を人たらしめているのかをストレートに鑑賞者へ訴えかけることに挑んでいる。

 混沌としたカオスの世の中に溶け込む人を模した存在は、境界線のない曖昧な世界と一体となっており、特徴的なパステルカラー(淡い中間色)は、まさに「人とヒトのようなもの」のあわいを表現するに相応しい。

 空想の存在であったAIロボットが、エネルギーの集合体(技法)=実体(絵画)としてこの世界に溶け込んでゆく様子を描き、その先で残る人間という存在の核を探る。

 原宿の若者が発するある種のエネルギーは、根源的な人を人たらしめているものの正体の一つであるかもしれない。

 

新井 浩太

 一番直接的な五感である「触覚」が自分の中で大事な感覚であり、その感覚を形に残すことが重要だと感じたことから彫刻という表現方法を選択したという新井は、子供の頃からソフビやフィギュアが好きでよく遊んでいたという。小さな頃からヒーローのソフビなど人の形をしたものを遊びの道具にしてきたことで、必然的に人物の造形を追求していくことになる。

 新井の代表作とも言える、CAF2019入選作品の「tsurudoro」シリーズは、FRPと、水性樹脂、双方の素材の特性を利用した作品である。二つの一見反するテクスチャーが一つの像に合わせられた時見えてくるのは、形態に上乗せされた形により形が欠落した不完全のような像であり、また、重苦しいなにかを纏いながら、その存在に気が付かないように、もしくは知りながらも無視して現在を生きる人々の姿にも重なって見える。

 ポーカーフェイスで表情のない人型に、テクスチャーと素材の対比。そして、粘土で原型をつくり、石膏で型取り、FRPで成形するという、一度作ったものを壊してはまた形が作られ、それを繰り返す塑造の間接的な制作工程自体が、絶妙なバランスで融合し、新井の表現行為を成立させている。

 最近ではコロナ禍で大学での制作が困難になった背景から、FRPよりも可塑性が高く、よりストレートな表現が可能なセラミックの作品を多く制作するようになり、ドローイングのように直感的かつ温かみのある対極な表現も、新井の新たな魅力の一つとして磨かれつつある。本展では、FRPとセラミックの両作品を、現在進行形で変化し続ける、対極にある人物表現の振り幅の対比として展示する。

 

松浦 美桜香

 平面も立体もぬいぐるみも、その独特な世界線に生きる住人たちに自身の魂を吹き込み、我が子のように愛し、可愛がる。若干二十歳ながらも、世界を確立し、愛を持って送り出せるというだけで、すでに大器は成形されつつあるように感じる。多様な素材を器用に扱いながらも、一種完成された特徴のある独自の造形表現を魅せる彼女の心のうちに見えるものは、どこかかつて原宿に集った若者たちに重なる部分があるのではないだろうか。

 自分というフィルターを介して見た人物を、自分がその人物を見て感じた時の感覚や記憶に頼りながら制作する行為により、自分の無意識下に存在している深層世界と他者の記号的な情報とを融和させながら、絶妙なバランスで「崩し」「再構成」している。

 元々人の顔に強い興味があった松浦は、表面的な顔の造形の他に「比喩的な裏の顔」とも言える、自分の今までの裏切られた経験や心の奥底に眠る感情などを回想することで、ある種のユーモアを持って造形に反映させている。顔の一部が変色していたり、ねじれや敢えてのアンバランスさ、危うさを持った作品の表情の数々は、制作工程の中で自身の精神とリンクさせることで生み出される。人の顔を仮面みたいに感じる時もあるという彼女の瑞々しい感性は、同時代に生きる若者の心の声を映し出す鏡のようなものかもしれない。本展では原宿という場所で行われる展覧会に合わせ、今回は若者の繊細な心や揺れる感情を自身の心と重ねながら、Pedestrian Paradiseで戯れる人々の造形を表現した。少しおかしく陽気で、少し悲しく孤独である、アンバランスな造形から透けて見える人間臭さに人間の本質を見る。


 

 

浅野 克海

1997 愛知県生まれ

2016 名古屋芸術大学 美術学部 美術学科 洋画コース 入学

2020 名古屋芸術大学 美術学部 美術学科 洋画2コース 卒業

2021 東京藝術大学大学院 美術研究科 絵画専攻 油画研究分野 入学

受賞

2020

・「第47回 名古屋芸術大学卒業制作展」 北名古屋市長賞 優秀賞/ブライトン大学賞 佳作

2018

 ・「第42回 三菱商事アート・ゲート・プログラム」入選

 ・「第13回CBC翔け!二十歳の記憶展」 グランプリ

2017

 ・「第22回 アートムーブコンクール展」 入選

新井 浩太

1999 千葉県生まれ

2018 東京造形大学 造形学部 美術学科 彫刻専攻領域 入学

受賞

2020

・「池袋アートギャザリング公募展」 TALION GALLERY奨励賞

2019

・「CAF賞2019」入選

松浦 美桜香

2001 東京都生まれ

2020 多摩美術大学 美術学部  絵画学科油画専攻 入学

受賞

2021

・「FACE展2021」入選

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