吉田桃子 個展
「Pit Lo Ssence」
会期:2022/6/25(土)〜7/10(日)
開廊時間:木・金 15:00〜19:00 土・日 12:00〜19:00定休:月・火・水
会場:myheirloom(アーツ千代田3331内)
※月火水の祝日は閉廊、木金土日の祝日は開廊とさせて頂きます。
時間等は通常営業と同様です。
myheirloomではこの度、大阪を拠点とするペインター、吉田桃子の都内ギャラリーでは初となる個展【Pit Lo Ssence】を開催いたします。吉田は音楽を聴いているときの高揚感やそこで頭に浮かぶ映像的なイメージを絵画の形式に変換し閉じ込めることで、鑑賞者とその感情を共有する装置として作品を制作しています。
音楽が呼び起こす「エモい」感覚。吉田はこの「エモさ」の具現化のために絵画と向き合っています。「エモい」という言葉自体の語源は、90年代から2000年代にUSロックの1ジャンルとして派生した「Emo」からきています。泣き虫ロックと言われ、冴えない少年たちの鬱屈した感情を奏でるWeezerといったバンドに代表される、激しさとは違うベクトルにある繊細で叙情的な音楽。2016年にはこの「Emo」がメディアアーティストである落合陽一氏により「人間にとってエモいこと以外は全部コンピューターにやらせればいい」という発言により言語化され「今年の新語2016」で第2位に選出されたことで一気に流行語として一般に広まっていきました。しかしながら、我々がふと「エモい」と感じるその瞬間について、明確に提示する術を持ち合わせている人は少ないでしょう。
吉田は、その言葉の語源でもある音楽を手がかりに、その「瞬間」を現前させようと試みます。特定の音楽を聴いた時に頭に浮かぶ映像的イメージ、音楽が揺さぶる心の動きの正体について、自作の舞台装置やマネキンを使いながら分解し、再度読み解き平面作品として構成していきます。
制作のプロセスは、まずそれぞれのシーンの舞台装置となるマケットやマネキンを加工したオリジナルの人形を作ることから始めます。自作したマケットや人形を動画で撮影し、更にその映像内から最も相応しい1コマを選出し、絵に描き起こしていきます。必要に応じて映像を取り直しを繰り返し、より理想的な1コマを得るべく、映画監督さながら理想のカットを追い求めるのです。記憶と現実の風景が混ざり合う舞台に自分自身、あるいは自身の親しい人からインスピレーションを得て生まれたキャラクターを登場させ「シーン」を演出していきます。そこには、人間の魅力をドラマティックに描くエリザベス・ペイトンからの影響も伺えますが、そのエッセンスを唯一無二の自己表現へと昇華させているところに、力強さと揺らぐことのない作品としての堅牢性を感じさせるのです。
本展で新たに展開するシリーズではより、その作品世界を広げるため、面識のないSNS上でのみ知っている人物や、自身より若い次世代のミュージシャンなどを積極的に取り入れ、あえて自己から遠ざけたところでの制作を試みています。「エモさ」と「若さ・青春」は重なる概念だとする考えから、徐々に対象をギャップのある新世代に切り替えることで、より忠実な感情の演出と、作品における自身の監督的な役回りをより強化する意図も持ち合わせています。ラップ、ヒップホップといった今回新たに触れた音楽ジャンルからの影響を受けた大作「Pit Lo Ssence #1」では、日常を感じさせるこれまでの作風から少し距離のある、より映像性の高い画面へと変化を遂げています。
従来より、本シリーズの制作に一貫して透過性の高い薄い支持体を用いるのは、まるで登場人物たちが映画のワンシーンとしてスクリーン上に現れるかの様な表現のために必然的なものでした。マケット、映像、絵画の間を何度も行き来する過程でイメージは再構築され、最終的に半透明の巨大な布に投影されたかのように現れる絵は、もともと頭の中にあったものとは距離のある、作家の想像を超えたものとなります。
非常に複雑かつ手間のかかる工程を経て「エモい」感情の視覚化を追求する吉田の作品群。自身の若かりし頃に思いを馳せながら、記憶と重なり合うことによって頭の中で鳴り響くその音楽と共にご鑑賞いただければ幸いです。
吉田桃子(Momoko Yoshida )
1989 兵庫県生まれ
2016 京都市立芸術大学大学院美術研究科 修士過程 絵画専攻修了
< 個展 >
2016 〈 sceneUKH 〉 galerie16, 京都
2017 〈 scene UKH ver.2 〉 波さがしてっから, 京都
〈 scene UKH ver.3 〉 三菱一号館美術館歴史資料室, 東京 〈 scene UKH ver.3.1 〉 ART ZONE, 京都
< グループ展 >
2015 〈 作品中! 2015 〉 galerie16, 京都
2016 〈 ウッホッホウホウホアートショー〉 波さがしてっから, 京都
〈 アートアワードトーキョー丸の内 2016 〉 丸ビル マルキューブ, 東京
2018 〈 京芸 transmit program 2018 〉 京都市立芸術大学ギャラリー @KCUA, 京都
2019 〈 Kyoto Art for Tomorrow2019 ー京都新鋭選抜展ー〉 京都文化博物館, 京都
2021 〈 KYOTO ART LOUNGE EXHIBITION 表裏のバイパス〉 藤井大丸ブラックストレージ , 京都
〈 Slow Culture〉 京都市立芸術大学ギャラリー @KCUA, 京都
< アートフェア >
2018 〈 ART OSAKA 2018 〉 ホテルグランヴィア大阪 26 階, 大阪
2020 〈 ARTISTSʼ FAIR KYOTO2020 〉 京都文化博物館別館, 旧日本銀行京都支店京都新聞ビル 地下 1 階 , 京都
2021 〈 3331 ART FAIR 2021 〉 3331 Arts Chiyoda, 東京
〈 Art Collaboration Kyoto Special programs: Framing Physicality 〉 国立京都国際会館イベントホール , 京都
< 受賞歴 >
2013 〈 第 28 回ホルベイン・スカラシップ奨学生〉
2016 〈 京都市立芸術大学 大学院市長賞〉
〈 アートアワードトーキョー丸の内 2016 三菱地所賞 〉
2019 〈 ART IN THE OFFICE 2019 〉